2014年11月30日日曜日

A Lovely Curious Scientist

語学が苦手なことで世界一有名な科学者は、断然、益川敏英先生ってことになるのだろう。なんてったってノーベル賞の受賞記念講演を、日本語でやっちゃうという異例が罷り通ったのだから、文句なしの“史上最強”。ご自身の不得手を、全く卑下してらっしゃらないからこその、快挙である。

とは言え無論、語学自体を軽視しておられる訳ではなく。

「やっぱり、英語もできたほうがいいね」と、羞じらう笑顔がとってもラヴリー。正に『自己評価高いのに謙虚な御方』で、私にとって“一番尊敬できると思える”お人柄。数日前、朝日新聞に掲載された『耕論』で、言及なさっている大学院入試の逸話は、ご人徳が遺憾なく発揮されたゆえの成功譚だ。

『数学と物理学は満点』なのに、『ドイツ語は完全白紙』な“確信犯”。その上『英語も散々』だった学生を、「語学は入ってからやればいい。後から何とでもなる」と執り成して下さった「電子顕微鏡の世界的権威(上田 良二 先生と拝察)」こそが、ノーベル物理学賞の栄誉をもたらした、真の立役者なのかもしれない。

しかし益川先生も、最初からこの境地に、至っておられた訳では無いだろう。

今になって、振り返れば。凄まじいほど先鋭化した数学的論理思考が、圧倒的優位を占めていたから、言語的論理思考に割り当てられる脳の機能は、母語である日本語だけで精一杯だった、などと屁理屈も捏ねられるが。中学・高校時代は、英語がちっとも頭に入らない焦りで、随分お悩みになっただろうなぁ、と想像する。

その苦しいお気持ちを昇華して、ご自身が天賦の才と信ずる数学へ、全身全霊を傾け『自分のセンス、感覚を研ぎ澄まして』いったからこそ。大学院入試からノーベル賞の受賞記念講演まで、前代未聞の“方便”を使っても周りの方達が支援したくなっちゃう、ご人徳を備えるに至ったのだと、私は思う。

そして益川先生は、ご自身の人生に関わった、他者への敬意と仁愛を惜しまない。

『語学が大嫌い』な自分でも、ノーベル物理学賞を取れたのは、『日本語で最先端のところまで勉強できるから』『自国語で深く考えることができるのはすごい』と、全ての先達へ向けた畏敬の念へ帰着したり。

『英語が0点の学生がいたとしても、それだけで門前払いにするようなことだけはしないで』『20年もたてば、日本語で話せばすぐに翻訳してくれる器具が間違いなくできている』と、未だ見ぬ将来へ思いを馳せる。

それが益川先生を、「CP対称性の破れ」という“多様性”の起源発見へ導いた、学問への情熱、すなわち好奇心を支える礎なのだと、私は思う。


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