糖尿病については前職で、疫学から臨床まで、かなり深く学んだ。
職務上、患者さんと直に接する機会は、得られなかったけれど。データを解析する必要から、特に診断基準となっている各種検査値に関して、その道の権威と謳われる先生に、伝手を頼って御教授を請うた事もある。
だから村上竹尾さんの『死んで生き返りましたれぽ』を、pixivで拝読した時。一番愕然とさせられたのは、診断書に記された来院時の検査値だった。殊に血中グルコースが932 mg/dlというのは、こんな数字が出せるのか?!と目を疑う値。
普通なら、ここに至る遙か手前で倒れている筈で。極めて頑健な身体をお持ちだったからこそ、ご自宅のトイレで人事不省に陥っている所を、発見される状況になるまで、ご自身を痛め付ける仕儀になったというのは、誠に皮肉な話だ。
健全なる肉体にだって、不健全な心が、宿ることはある。
肉体的には、むしろ恵まれていた作者が、糖尿病性ケトアシドーシスは勿論、横紋筋融解症からの急性腎不全と高アンモニア血症、全身状態の悪化から肺炎と敗血症、更に脳浮腫まで。主治医が『全部 死ぬ病気です』と断言した合併症を、同時多発するほど重篤な糖尿病を患った原因は、スポーツドリンクの過剰摂取。
元来極めて頑健な身体をお持ちでありながら
本来は“身体に良い”筈のスポーツドリンクで
なぜ心肺停止に至るまで病んでしまったのか?
その委細は無論、日常の偶然の蓄積が必然の奇譚へと帰着した、本作をお読み戴きたいが。生命の本体たる身体を顧みる事さえ忘れ、作者の心が惑溺し翻弄されていた「それ」と、一度は生きる事を放棄してしまった身体を、再び心が取り戻す力の源泉となった「それ」は、表裏一体……とだけ申し添えておこう。
そして浮腫で壊れかけていた脳が、嘗て世界と共有していた“事実情報”の記憶を、回復してくれた契機は紛れもなく、大切な人達との対話を通じて、一度は失ってしまった“感覚情報”をひとつずつ少しずつ、再共有して行くことだった。
患者が 家族が 医師が 看護師が
如何にして、死への恐怖を乗り越え、
再び生きる勇気を、獲得して行くのか?
克明に物語ってくれた作者へ、『世界糖尿病デー』に合わせ出版を企画して下さった関係者の皆様へ、心からの感謝を込めて……
Welcome Back to Your Life and We All Love and Appreciate Your Story !
【追記】
ご指摘の箇所、自分でも全く気付かぬうちに、潜在意識からポロリしたかも……です。拙宅も家族一同、ハマっておりますのでw 『犯罪係数』だとしても、滅多に拝めない値、なのでございましょうねぇ> T 様
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