2014年11月10日月曜日

『東ロボくん』への期待

メディア各社の報道内容は、概ね「面白研究紹介」的な論調でしたけど。人工知能の苦手を如何にして克服させるか?てのは、教育技術論として非常に重要、且つ興味深い研究テーマなんですよね、ホントは。

無論、『東ロボくん』の“母”を自任しておられる新井 紀子先生は、そこを主眼に人工知能プロジェクトのディレクタを務めておられる訳ですが。

『情報共有』をキーワードに、最先端研究を推進してらっしゃる立場に在っても、プロジェクトの経過を報道する記者達から、「ロボットは東大に入れるか」というcatchyだけれども表層的な話題ばかり強調され、人間同士であるにも関わらず微妙にズレた解釈をされてしまうのが、なんとも遣る瀬無い。

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前回の記事で私自身がモニョってた件も、端的に言えば『情報共有』、詳しく言えば「二次小説、すなわち、原作の世界観・登場人物をどんなに上手く剽窃できていても書き手は原作者様と別人」という、極めて基本的な“事実情報の共有”が、出来ていなかったゆえの“遣る瀬無さ”なんですよね、要するに。

ただし、“事実情報の共有”に齟齬があった一方、『勘違いをなさった読者様』は、原作漫画と拙作二次小説の妙味(大雑把に括れば「恋愛もの」なので、主要カップルの心情とそれを演出する物語の雰囲気、ですかね?自作を分析するのは超絶照れますけどw)については、的を射たご感想をお寄せ下さってる。

つまり、“感覚情報の共有”率は充分に高かった。

それが為に『基本的な“事実情報の共有”が、出来ていなかったゆえの“遣る瀬無さ”』という私自身のnegativeな感情を昇華して、読者様から戴いたメッセージを『無邪気な誤解』『微笑ましくも粗忽な勘違い』と許容できたし、『そのような誤解も招き得る、と事前に想定できなかった自分自身に』メタな自己ツッコミも出来た訳で。

ちなみに当該『読者様』との遣り取りは、終始、SNSのメッセージ機能を利用 。直接お目にかかったわけでもなく、そして恐らくは、最初で最後の“接触”でしょう。

けれども両者の間には、『読まさせて頂いてます』『応援しています』『よろしくお願いします』『ありがとうございます』といった“テクスト”を介し、positiveな【心理感覚の共有】を行う仮想的な【場の共有】が確かに実現していた。

極めて基本的な“事実情報の共有”に齟齬があったにも関わらず、私達が相互理解と共感に至り【親しさ・共同性】を構築できた結果、“事件”が難無く落着した(結論のみを言えば、私は彼女からのリクエストを穏便にお断りできた)“鍵”は、『とあるWEB漫画』を愛読しているという【心理感覚の共有】が根底にあったからだろう。

(注意:【】内は綾屋 紗月 氏『発達障害当事者研究 ゆっくりていねいにつながりたい』より借用した表現;詳しくは拙ブログで8月に公開したコラム『感覚の囚人・共感の達人』をご参照下さい)

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さて、『東ロボくん』が昨年度の「全国センター模試」で出した成績傾向を詳しく見てみると、ちょっと興味深い妄想深読みが出来たので、記録として残しておく。

毎日新聞 2014年10月23日 東京夕刊掲載記事
『チェック:東ロボくん猛勉強!! 国立情報学研の人工知能 東大届かず私大A判定』
より引用させて戴きました

総合7科目の偏差値が45だったので、これを上回った教科を“得意”・下回った教科を“苦手”と定義すれば、日本史・世界史・数学・物理が“得意”で、英語・国語(ただし現代文のみ;古文は勉強してないようですw)が“苦手”らしい。

日本の大学受験を経験なさった皆様なら、概ね同意戴けると思うが。“事実情報の共有”は比較的“得意”なゆえに、歴史や数学・物理はまずまずの成績だった一方で、どうやら“感覚情報の共有”が“苦手”なため、現代文の『小説の読解』や英語の『対話文を完成させる問題』で得点できない様子。

この成績傾向、自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder、略称:ASD)当事者、殊に『音楽と数学で考える(パターン思考)タイプ』の当事者さんが訴える得意・苦手と、定性的にかなり合致しているように思う(現実の当事者さんは、もっと顕著な凸凹に苦慮して居られるのだが)。

そして今年の『東ロボくん』は“苦手”の英語で『会話文を完成させる問題の「特訓」が奏功し、昨年より43点アップ』。総合成績の偏差値も47.3に上がったそうで。

他者との【心理感覚の共有】を行う、仮想的な【場の共有】が困難だとしても。
対話の「特訓」で比較的得意な“事実情報の共有”を最大限に活かす事が、ASD当事者さんにとっても苦手を克服する一つの“鍵”となり得るのかも知れない。

【追記】
 サヴァン症候群の画家達に端を発し、ASD当事者の「脳の機能様式」をあれこれ考察してみた関連記事も、6本目となりました。発達障碍当事者研究に御興味おありの皆様には、以下の過去記事もお時間許す範囲で御参照戴けますと幸甚です。

  >> 第1回『視覚の囚人』
  >> 第2回『視覚の天才 (1)』
  >> 第3回『視覚の天才 (2)』
  >> 第4回『視覚の天才 (3)』
  >> 第5回『感覚の囚人・共感の達人』


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