2016年9月6日火曜日

うまくいかない文化

先日の記事を公開したところで、拙宅の娘に訊ねてみたら……

「ママは『お母さん』ジャナクテ『将軍』だよねぇ」だそうですw

つまり、戦略戦術を策定する専門性能と前線兵站を統帥する対人性能は、率先して発揮したがる一方、現場の実務に充てるべき代行性能は、面倒くさがってなかなか発揮してくれない、って趣旨なんでしょう。母の実態を的確に見抜いた、絶妙の喩えですwww

でも「良いお母さん」は往々にして、お仕事にしても家事にしても、現場の実務をこそ手際よく片付ける代行性能に優れておられる。それがために、お子さんの『危うさ』を直感した際、他人様に迷惑をかけぬよう我が子を成功へ導けるよう、親御さんが先回りして失敗を避ける策こそ打つべき先手と、思い込まれてしまうようにお見受けします。

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保育園で『危うさ』を指摘された当初、拙宅の娘は、発達が遅れている上にきちんとした躾もされていない、「悪い子」だと思われていました。

担任の保育士曰く「おやつの時間に大好物が出てくると、配膳中ちょっと目を離した隙に、まだお盆に載っているおやつをお友だちの分も全部食べてしまいました。『いただきます』のご挨拶をするまで、我慢して待つことができないためとても困っています」

その一方で、別の保育士曰く「まだ読み書きを教えていないのに、ひらがなで書かれたお友だちの名前を、いつの間にか読めるようになっていました。お話しが上手ではないので自分から話しかけるのは難しいようですが。お友だちへの興味はあるみたいです」

また主任先生曰く「何も載っていないお皿と、リンゴが一つだけ載ったお皿と、五つ載ったお皿の絵から『一番たくさんあるのはどれか?』選ぶだけの簡単な質問なのに即答できません。いちいちリンゴを数えてみないと、どれが一番多いか判らない様子です」

「自己肯定感を持たせるために 成功体験を」という惹句へ私が文言通りに従い、他人様へ迷惑をかけぬよう我が子に成功だけを体験させられるよう、娘の『危うさ』が連日しでかす失敗を先回りして避ける代行性能のみへ専心していたなら。当時就いていた研究職を辞め娘を退園させ、母子で自宅にひきこもる他に選択肢はありませんでした。

しかし留学先で娘を出産し、彼女が2歳半の時に帰国して来たばかりの私は、「この子は自閉圏なのかも」という疑懼を既に抱いていた一方、日本ではお馴染みの惹句を知りませんでしたから。保育園で日頃おかけしているご迷惑へ深謝しつつ、主任のN先生がご提案下さった臨床心理士の定期観察を、躊躇無く受諾することが叶ったのです。

実母より遙かに優れた代行性能をお持ちの専門家へ、保育や教育の助力を仰ぎながら、娘の特性に沿った自家製療育を策定する専門性能と、娘の育ちに関わって下さる皆様との関係性を統帥する対人性能へ、仕事や家事の傍らでも存分に専心できた所以です。

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もう一点、「良いお母さん」が「普通」以上に優れた代行性能をお持ちであるがゆえの、陥穽を指摘させて戴けば、他人様に迷惑をかけぬよう我が子を成功へ導けるよう、「みんな」以上に厳しく自律し努力を積む聡明さを、『危うさ』を抱える我が子のみならず助力を仰ぐべき専門家へも、無意識のまま要求なさってしまう「文化」でしょう。

先日の記事の繰り返しになりますが、「良いお母さん」には、我が子が「悪いこと」をやらかしてしまう『危うさ』を、看破することが極めて難しい。「みんな」以上に自身を厳しく律して努力を積めば「普通」以上に優れた能力をも獲得できる旨を、教諭されただけで承知できる聡明さが、生来『危うさ』の代わりに賦与されているからです。

なればこそ「良いお母さん」が、『危うさ』を熟知した専門家へ委任すべきは、我が子の『危うさ』がやらかす失敗を周到に回避しうる代行性能ではなく。お子さんの成長を妨げ『危うさ』を生じさせている五感や認知の凸凹へ、共感しつつ寄り添える対人性能と、その特性に合わせて「苦手を避け 得意を伸ばす」体験を策定する専門性能です。

「良いお母さん」が、他人様に迷惑をかけぬよう我が子を成功へ導けるよう、失敗を忌避し努力を積むよう厳しく自律させる「文化」でうまくいったのは、教諭されただけで承知できる聡明さを賦与された「良い子」だったからこそ。

『危うさ』を持ち合わせる我が子を授かった「良いお母さん」には、「うまくいかない文化」を「うまくいっちゃう文化」へ軌道修整する体験へ、お子さんが安心して繋がれる「毎日・毎年」を支えるべく、どうか優れた代行性能を発揮戴けますように……

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