記者会見の喧噪が大の苦手なので、一問一答の記事を毎日新聞のサイトで拝読した限りですけれど……
高畑 淳子さんは、すごく「良いお母さん」なんだなぁと感じました。
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でも「良いお母さん」が「悪い子」の『危うさ』を周到に俯瞰なさって用意することは、極めて難しい。「悪い子」がやらかす「悪いこと」には「悪いお母さん」でないと、布石を置けないからです。
自分の子に潜在する『危うさ』を直感した時、「良いお母さん」はご自身が持ち合わせぬ『危うさ』を怖れ忌避するゆえに、他人様に迷惑をかけぬよう我が子を成功へ導けるよう、「悪いこと」を禁じ「良いこと」を努めるべきとお子さんへ教諭なさいますが。
「悪いお母さん」は、我が子を「悪い子」にさせぬよう、むしろ失敗を体験させることを覚悟します。『危うさ』が招く失敗の怖さを自身に体感させておかなければ、我が子は『危うさ』を他人様へも向けかねない、という先の手まで深読みが出来るからです。
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先日の記者会見で漏らした『育て方が悪かったのだ』という感慨について、巷間では様々な意見があるようですけれど、私はお言葉どおり「お母さん」としてのお気持ちを受け止めたいと考えています。
何年か前、彼女の日常を取材したテレビ番組でお見かけした限りですが……
高畑 淳子さんは、すごく「頑張ってるお母さん」なんだなぁと思いました。
取り分け印象的だったのは、美容院で髪を染める待ち時間さえ惜しんで(人気女優でありながら、ご近所のありふれた美容院で整髪なさってるのも意想外でした)、頭にタオルを巻いたままご自宅へ駆け戻り、家事を懸命に片付けていらしたエピソードです。
そして、すごく「賢明なお母さん」なんだなぁとも思いました。
大河ドラマでご活躍中のコミカルな演技からも、聡明なお人柄は伝わって来るのですが。不規則で多忙なお仕事の一方、ご家族の日常を支える家事でも、他人様に迷惑をかけぬよう我が子を成功へ導けるよう、心を配り工夫を凝らして努めておられました。
にも関わらず、『育て方が悪かったのだ』と悔悟を募らせる結果を招いてしまった所以は、何処に在ったのでしょうか?
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語弊を懼れず端的に申し上げれば、「良いお母さん」が「悪い子」を授かった偶然。
更に言葉を補えば、「良いお母さん」には、「悪い子」が「悪いこと」をやらかしてしまう『危うさ』を看破することがすごく難しいのに、他人様に迷惑をかけぬよう我が子を成功へ導けるよう、ご自分お一人で全てを抱え込まざるを得なかった、必然です。
「良いお母さん」が、「悪いこと」を禁じ「良いこと」を努める正しい「生き方」を、ご自身の言説や行動を以て我が子へ教諭なさろうとしても、生来の『危うさ』を潜在させているお子さんの「生き方」には、遺憾ながらほとんど響かないと私は思います。
高畑 淳子さんも、『それがどう彼に響いていたのかはちょっと分からない』と述懐なさっておられますけれど。息子さんの『危うさ』は『具体例や試行錯誤から習得するのが苦手』な性向、つまり「悪いこと=失敗」も「良いこと=成功」も繰り返し体験させなければ成長へ導けない、五感や認知の凸凹に起因しているためだと私は考えています。
良妻である事が叶わなかった偶然ゆえに、賢母となる必然を覚悟なさった高畑 淳子さんなればこそ、息子さんが抱える『危うさ』の本質は疾うにお気づきと拝察いたします。また、お嬢さんとお気持ちを支え合うことが、なによりの励ましになっているご様子。
優れたお人柄ゆえに、自責の念も一層強く感じておられると存じますが。どうか今度こそ、『危うさ』を持ち合わせぬ自分の努力が及ばぬ偶然と、『危うさ』を怖れぬ他者の助力を仰ぐべき必然の、理を見極める俯瞰を得て「良いお母さん」と「悪い子」の呪縛からご自身を解き放ち、息子さんの『危うさ』を熟知した支援へ繋がれますように……
【追記】東洋経済ONLINEに『高畑淳子さんを責めても何も解決しない』と題し、性犯罪加害者の再犯防止プログラムに尽力なさっている、榎本クリニックの斉藤 章佳 氏へ取材した記事が掲載されています。併せてご参照戴けますと幸いです。
【補記】「お母さん」と「子」連作として不定期連載しております。お時間許す範囲で併せてご笑覧賜れますと幸甚。
>>続篇『「「変な子」と「変なお母さん」』を読む
>>続篇『暴れる子と『頑張るお母さん』』を読む
>>続篇『緘黙する子と優しいお母さん』を読む
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