2014年5月24日土曜日

貴族の威信・市民の矜恃

>>第1話レビュウ『階上と階下のドラマ』を読む


そして第2話も、濃厚・緻密でしたね〜vvv『ダウントン・アビー』

って、突然で恐縮ですが……今期の土曜日は僭越ながら、『ダウントン・アビー』各回のレビュウを、集中連載させて戴く事に独断致しました!

超絶上質な萌え燃料の大盤振る舞いは、誠に有り難き慶事ながら。取り急ぎ、字書きで出力しておかない事には、毎週の視聴後、妄想深読み満載な怒濤の滾りを、洩れなく“在庫”として長期記憶へ移行する、自信が無くなって参りました次第w

さて、第1話「嵐の予感」にて、階上に住まうグランサム伯爵家の“御家族”と、彼らにご奉仕すべく、階下で立ち働く“使用人”のドラマを、見事に描出なさったジュリアン・フェローズ御大ですが。

第2話「招かれざる客」は、階上でも階下でもない“第三の”階級。すなわち産業革命の後、“世界の工場”たる繁栄を謳歌した英国だからこそ新興した、中流階級が物語の中心となります。

《以下、第2話「招かれざる客」のネタバレ御注意!》

シリーズ初回、爵位の継承者であり限嗣相続人でもあった、甥御様(=ご長女・メアリー嬢の婚約者)の訃報に翻弄され、使用人との間にも、独断で従者に採用した戦友ベイツ氏を巡って、禍根を生じてた旦那様。

ですが、ご決断なされば、実行に移すのは迅速。次なる後継者・マシュー青年を、母親のクローリー夫人と共に、お屋敷近くの村へ移転させちゃいます。で、この母子の出自が中流階級、という訳ですが。

使用人同士でさえ、格差を設定したがるお国柄。ゆえに当然、中流階級の内にも上下の別が有り。亡きご夫君(=マシュー青年の父上)や、父や兄も医者だったクローリー夫人は、上品で知的である事に於いて、上流階級にも引けを取らない「上位中流階級」の矜恃を保とうとします。

一方、マシュー青年自身は、伯爵家の晩餐会で語ってらした転職先の業務内容から、事務弁護士と判ります。旦那様が相続関連事務を委託してらっしゃるマレー氏同様、顧客の要請に応えて法律事務を取り扱う“仕事”。なので、法廷弁護士を志望しリンカーン法曹院で学んでらっしゃる、お嬢様がたの従兄弟に比べると、格下なんです。

依頼された“仕事”を行い対価を受け取る、という点に於いて“使用人”と同じ。
トーマス達が口にしてた辛辣な批評は、あながち外れてはいないんですよね。

旦那様が手配して下さった、執事兼従者のモールズリー氏を、マシュー青年が拒んでいたのも。単なる矜恃だけではなく、客観的に、自分だって顧客に使われる立場、だからこそ『僕には不相応』との思いが強かったのでしょう。

少々脱線しますけど、cottage hospitalのクラークソン医師が、右心不全による下腿浮腫の外科的処置(心嚢穿刺)を渋っていた件も。内科医の矜恃が邪魔したのかなぁ(あ、当時は外科医の方が、格下と見做されてました)などと深読みしてみたり。

てな具合に、上は先代伯爵夫人から、下は下級使用人まで。己の『果たすべき役割』に抱く様々な思いが、乱麻の如く錯綜する中。旦那様は敢然として平らかに、領主たる御自身が最善と信ずる果断を、実行なさって行きます。

前回は、そこはかとなく受け受けしかった旦那様w ですが。
超絶カッコイイ!と見直しちゃったり。政略結婚だった奥様も惚れるわけだ!と納得しちゃったり。

『バッキンガム宮殿の殺人』で、女王陛下の顧問弁護士を務めるアーノルド卿が仰ってた、『頂点に立つお立場』だからこそ『臣民の一人一人を分け隔てなく』見られる、『陛下は公爵とトラック運転手の違いがお判りにならない』とは、正にこの事。

貴族の威信、すなわちnoblesse obligeの深意を、鮮やかに描いた群像劇!さすがリアルで爵位をお持ちな、ジュリアン・フェローズ御大、巧い……巧すぎる!!!

そして、中流家庭はやっぱり女性使用人しかいないのねぇとか。
お嬢様の領内へのお出掛けは、もちろん乗馬&馬丁がお供v とか。
この度は奥様も階下の使用人ホールへお出ましに!とか。

ダンスが上手い男よりピアノが弾ける男子の方が、ホントはカッコイイのよw とか。
この時代だと旦那様は現金をお持ちですのね!£10.00 紙幣でかっ!ぺらい!とか。

細々とした萌えポイントを同好の皆様と密やかに共有しつつ。
第2話も、隅から隅まで、超絶美味しく戴きました〜っvvv


>>第3話レビュウ『華麗なる婚活・隠然たる不穏』を読む

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