多忙を極めるサポートスタッフの皆さんに、コメント管理の労をお掛けするのは、恐縮至極。そして同じく、ご多用を押して記事を書いて下さってる当事者の皆さんに、コメント返しのお気遣いを強いるのは、本意ではございません。
そんな次第で、自己リプにてボソボソ独白しておりましたが。一気読みできると、また違った形でお役に立てるかも……と若干の改稿を加え、転載してみました。
2015-06-24『ひきこもっている人たちの声 青木』へ寄せて
ひきこもりに至る“難儀”は、当事者『自身が どうしていいのかわからない』こと。
そして、他者に『伝えたところで どうなるわけでもないと思っている』こと。
感覚過敏が嵩じた感覚飽和もしくは感覚鈍磨のため、当事者さんはご自身の【感覚情報】を【意味や行動にまとめあげるのがゆっくり】すなわち自分が“感じる事・思う所”こそ、むしろ“まとまらない・客観できない”という特性がある。
だから『どうしていいのかわからない』
ご自身の【感覚情報】を【意味や行動にまとめあげるのがゆっくり】だと、それを待てない周囲は、ついつい何でも先回りしがち。親御さんや先生が整えてくれた“お膳立て”に、応えられるうちは表面上、問題が無いように見える。
しかし他者との齟齬が一旦生じた時には、
『伝えたところで どうなるわけでもない』と“誤学習”をしてしまう。
たとえ当事者自身の【感覚情報】を【意味や行動にまとめあげるのがゆっくり】でも、
当人が『どうしたらいいのか』を自ら掴むまで、ジックリ待つことが支援の第一歩
になる所以です。
あ、親御さんや先生の整えた“お膳立て”が、たとえ日本で最難関とされる最高学府でも、あきまへんぇ。東京大学へ入学・卒業できても、修士課程で生じた他者との齟齬に、不適応を起こして不登校→ひきこもり、というケースもあるのですから……
大野さんの俠気溢れるカミングアウトは、発達障碍は知的障害でも学校制度の問題でもないことを実証し、たとえ東大へ入れても相応しい支援・適用すべき合理的配慮が成されなければ、社会へ適応できないことを提起する上で、大変意義深い一歩なのです。
2015-06-25『電話の問い合わせが400件に 俊介』へ寄せて
発達障碍者は他者の気持ちに寄り添うことが苦手…広く流布されている障害特性ですが、実はまるで見当違いな誤解ではないか…俊介さんの文章を読むと、そう思います。
過ぎるほどに鋭敏な五感を介し、他者の【感覚情報】を非言語的な“事実情報”として精細緻密に読み取れる一方、自分自身の【感覚情報】すなわち「感じる事・思う所」こそ、むしろ「まとまらない・客観できない」というジレンマ。
他者の気持ちに過ぎるほど寄り添えるから『他の人と同じことをしたいのに』
自分自身の【感覚情報】を、取るべき行動へまとめ上げることが困難だから
『不安が強くてできない』ジレンマ。
それを打開してくれた『適切な支援』は、
取るべき行動を明示し、“役割”を与えてくれること。
『自分の無力さを感じ』つつも、かつての不安に陥ることなく『何ができるかわからないけれど、なんとかしたい』と思えるのは。『与えられた役割』が、今の俊介さんにはハッキリ見えているから…なんですね。
自身の【感覚情報】を行動へまとめ上げるのが【ゆっくり】な特性を、待ってあげられない周囲が先回りして整えた“お膳立て”は、（たいてい見当違いな）“手段”に過ぎません。たとえ“お膳立て”が、日本で最難関とされる最高学府への入学であっても、東大生になることは“役割”じゃないので。
大野さんも、今は『経済的に独立して、結婚し家庭を築き、親と家族がともに過ごす』という、自分が果たすべき“役割”を明確にイメージできています。
でも、それを可能にしたのは、
東大進学という“手段”を目標と勘違いしてた受験勉強じゃなくて…
揺れる気持ちを支え続けながら、
『将来のことを話し合って』くれた『適切な支援』なんです。
2015-06-26『不安なんです。だからひきこもる 俊介』へ寄せて
『今考えたら、スタッフたちは父親でもあり母親でもあったんだなと思います』
仮に当事者の親御さんの瑕疵を、一点だけ指摘させて戴くなら。
親である自分が自然と分かるようになったんだから、きっと子どもだって自然と分かるようになってくれる、と考えて『適切な支援』を逸してしまったこと。
でも、親子と言えど全く別の人間なので。感じ方・考え方・理解の仕方は、
発達障碍の有無に関わらず、全く違ってる筈なんです。
『だから、親御さんたちが子どもたちに』自分の感じ方・考え方・理解の仕方を、折に触れて明示してやる必要があるし。子どもの感じ方・考え方・理解の仕方が多数派と(or 自分と)違っていても、それを承認・受容した上で『マイナスな部分を修正』＆補完しつつ、お子さんには『素晴らしい部分もあるんだと』『丁寧に伝えて』あげることが肝要。
逆に言えば、発達障碍の有無に関わらず、周りの大人と子ども本来の感じ方・考え方・理解の仕方に甚大な齟齬があれば、不登校や引きこもりを生じさせかねない、ってこと。実際、不登校の現場では発達障碍は見られない・取り立ててトラブルも無かったのに、何となく学校に行けなくなった…ってケースが少なくないのです。
ところで不登校・引きこもりの当事者さんは、
概ねゲームに耽溺してるように見受けられるんですが。
実は、心底ゲームを愛好してるわけじゃなくて、謂わば“ライナスの毛布”、つまり慣れ親しんだ安心できる“場”に、逃避してるだけみたいです。だからゲームを取り上げても、不安をますます亢進して二次障害を増悪させるだけなんですよ。その典型例みたいな動画が、過日話題になってたようですが…(sigh)
2015-06-27『1,200人の悲しみ 俊介』へ寄せて
発達凸凹当事者なのに、うまくいっちゃったケースと、発達障碍ゆえに、ひきこもってしまったケース。予後を分けた重要な要因は……
第一に、感覚過敏が、軽いか・重いか。
鋭敏すぎる五感が【細かく大量に】受け取り続ける【感覚情報】で脳を“占拠”される【感覚飽和】が、心や知能の発達を妨げる障害特性の本体。なので、感覚過敏が軽微なら／合理的配慮で感覚飽和を回避できれば、予後の改善に繋がります。
第二に、“メンター”との出会いが、あったか・なかったか。
感じ方・考え方・理解の仕方の“多様性”を、承認・受容した上で『マイナスな部分を修正』しつつ『素晴らしい部分もある』と『丁寧に伝えて』くれる、保護者以外の年長者＝メンターと出会えれば、誤学習を回避し有益な経験を積めます。
第一の要因＝感覚過敏は障害特性の本体なので、合理的配慮を求めることが必然です。
第二の要因＝“メンター”との出会いは、適切な支援を求めることで機会を得られます。
2015-06-28『本日講演会ですがそれよりも・・・ 俊介』へ寄せて
『明後日から始まる学校の方が不安です』
学校という“場”に対する苦手意識が『不安というより、怖い』と仰るほどに強いのは、過ぎるほどに鋭敏な五感を介し、非言語的な“事実情報”として精細緻密かつ大量に流れ込んで来る、他者の【感覚情報】に翻弄されるまま、友達との【心理感覚の共有】ないし【場の共有】に失敗してしまった経験が、俊介さんの脚を竦ませるのでしょう。
でも、今の俊介さんは……
自分が取るべき行動も『与えられた役割』も、ハッキリ見えているのですから。
きっと案ずるほどもなく、自然に身体が動いてくれるような気がします。
それに、いくら大勢のクラスメイトがいたとしても人間関係は一対一の積み重ねですから。焦らず穏やかに、俊介さんのお人柄を活かして一人ひとりへ丁寧に接すれば、必ず気持ちを共有することが出来るはずです。
2015-06-29『講演会が終わって 俊介』へ寄せて
『頑張って疲れたという感じではなく、私の無力さに疲れてしまいました』
そんな最中に拙ブログをご笑覧戴き恐縮至極。
『経験が全て』との結論は大正解です『前に進むしかないんです』
『頭が硬い、こだわりが強い、融通が利かない。だから社会とうまくやっていけない』障害特性は、専ら定型多数派側から見た現象論で説明されて来ちゃいましたが。ホントは当事者さんの感覚をこそ、重視すべきなんですよね…
何が“難儀”なのかは、それを抱えてる本人が決めることだから。
何が“難儀”なのかは、それを抱えてる本人が決めることだから。
『40人近くの人たちが私たちの話に食い入るように聞いてくださっているんです。緊迫した感じです』鋭敏すぎる五感を介し、そんなにたくさんの人達の【感覚情報】が非言語的な“事実情報”として精細緻密かつ大量に流れ込んで来たら、うまく話せなくなるのも無理はありません。
定型多数派よりもたくさん、それこそ1000回も経験を積まなければ『むしろ話すことは楽しい』域にまで至れないのは、ふだん感受している情報が精細緻密かつ大量に過ぎて、意味や行動にまとめあげる＝認知に時間がかかるから。
決して、当事者さんが無力だから、ではないのです。
決して、当事者さんが無力だから、ではないのです。
2015-06-30『青木さんの涙と僕と大野と 俊介』へ寄せて
『僕から先輩の大野さんのことについて言及するのは良くないことです』
ぃえぃえ、大野さんに言及して下さって助かりました。
ご自身は脳内に蓄積した“事実情報”が膨大すぎて、文章にまとめるのが難儀そうですから。俊介さんの率直な代弁は、ありがたいです。
素直で柔和な俊介さんと一本気で芯の強い大野さん
絶妙のコンビで、互いの長所が互いの短所を、補い合ってらっしゃいます。
さすがサポートスタッフの皆様は、要所をシッカリ押さえてみえますねぇ。
大野さんが『青木さんたちのアドバイスにも言い返すことをしなくなってきた』のは、俊介さんの穏やかで衒いのないお人柄を、見習ってのことだと思いますし。俊介さんご自身も、大野さんの俠気溢れる発言に、ハッと蒙を啓いておられる。
当事者さんが他者から学び合えるということは（たぶん全く意識してらっしゃらなかったでしょうが）、素晴らしい大進歩だと思います。
「努力は自分を裏切らない」という大野さんの“経験”と
「他者への共感が励ましになる」という俊介さんの“経験”を
互いに尊重し共有することで、必ず新たな道が拓かれる筈。
『外見そのまま、中身ごっそりとだれかの人格と入れ替わったかのような』変化が、お二人にも、じき訪れると信じています。
あ、恐縮ですが一点だけツッコませて下さいw
30年近くひきこもっていたから、（悪く言えば）意固地になってしまったんじゃなく。
（良く言えば）一本気で芯が強いからこそ、30年近くひきこもって“いられた”んです。
その間に考えておられたこと、是非伺ってみたいです。
>>続篇『冠省、“発達障害な僕たち”さま』を読む
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