2015年2月22日日曜日

至高の恐怖譚

その病の名を知ったのは、私が小学2年生だった時。
一冊の児童書に綴られた、不思議な物語の中だった。

本の題名は『びんの中の小鬼』
作者はロバート・ルイス・スティーヴンソン
私が“一番好きな童話”にして“至高の恐怖譚”

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現在手に入る本は、『びんの悪魔』あるいは『壜の小鬼』と改題されている。

そして本文中に、その病名は明記されていない。前者では『当時「中国の悪魔」とよばれていた、おそろしい伝染病』、後者では単に『疫病』と訳出された。

福音館書店世界傑作童話シリーズにあっては、訳者あとがきでさえ『“中国の悪魔”という病気』と記すのみ。岩波文庫版は訳注で、その疫病を発症した患者達の療養所が、かつてモロカイ島北海岸のカラウパパにあった旨、端的に言及している。

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40年前に読んだ『びんの中の小鬼』では、『らい病』と明記されていた。

抗酸菌の一種である『らい菌 (Mycobacterium leprae)』が、皮膚のマクロファージ内および末梢神経細胞内に寄生して、引き起こされる感染症。ゆえに『らい病』という命名は、至極当然にして客観的だったのだが……

「病気への理解が乏しい時代に、その外見や感染への恐怖心などから、患者への過剰な差別が生じた時に使われた呼称である」ため、偏見・差別を助長する含意を帯びるに至り、歴史的文脈以外では“禁句”となった次第。

代わりに現在、用いられている疾患名は『ハンセン病』。1873年に『らい菌』を発見したノルウェーの医師、アルマウェル・ハンセンの姓に由来する。

《以下、邦題『びんの中の小鬼』『びんの悪魔』あるいは『壜の小鬼』他、『The Bottle Imp』のネタバレ御注意!》

2015年2月8日日曜日

画力じゃないのよ涙は

諸般の事情で、ブログ更新がすっかり滞りがちになっている。
にも拘わらず、毎日一定のお運びを賜っている仕儀が、誠に貴く有り難い。

ご閲覧が多いのは無論、人気ブログに『繋がる力』をお分け戴いた記事だけれど。愛好する作品への想いを綴った「『それ町』第13巻感想!」を始めとするレビュウも、健闘してくれている次第が『字書きの右往左往』たる面目躍如。

そして勿論、キーワード検索で御来臨下さる偶然が多いのだろうが。再読に訪れて下さっている気配も、そこはかとなく感じて……

思う相手へ思う処が通じた歓びを、妄想深読みの裡に面映ゆく玩味している。

拙ブログで啓上するレビュウは、消費者としての感想ではなく。
“描く力”と“綴る力”を発揮して下さる、創造者への献辞だから。

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コミックスの単行本を収めた、我が家の書棚へ改めて目を遣れば。

画風には一切こだわらない、むしろ物語る力をこそ最重要視する“マイナー贔屓”の難儀な嗜好を、つくづく自覚する。

たとえば「Welcome back to your "HOME" !」で心酔を語らせて戴いた、萩尾望都先生の作品でさえ。所蔵しているのは、ハヤカワ新書版・第1刷が秘かに自慢な『銀の三角』と、SF作品最新刊の『AWAY -アウェイ-』第1巻のみ。

全く以て、不肖の読者の最たるもの。然れど『11人いる!』『トーマの心臓』も拝読し得た限りの作品は、バッチリ画像を添付したエピソード記憶すなわち“在庫”として、ガッツリ脳内に蓄積させて戴いておりますので。

物語る力を最重要視して、読む作品を選ぶ習いが性となった所以であり。
書籍として愛蔵させて戴くのも、創造者への敬意を表す方途なのである。

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清原なつの先生『千利休』を購入した経緯は、その典型かも知れない。

《以下『千利休』『3丁目のサテンドール『銀色のクリメーヌ』他、清原なつの諸作品のネタバレ御注意!》