今年は2月に、東京としては結構な量の積雪が、二度も記録されたし、
もう春の彼岸も終わるというのに、依然、陽が落ちると風が冷たい。
スギやヒノキの花粉も、飛散の進行が例年より10日前後遅れているらしい。
とは言え、冬の名残の冷気には、メジロが鳴き交わす声、沈丁花の芳香が
確かに潜んでいて……
見上げれば、ソメイヨシノの冬芽がいつの間にか、随分大きくなっている。
寒さが長引いたため、遅れるかと思われた開花・満開だが、実は平年並み。
とは言え東京では昨年より、やはり10日以上遅い予想となっているようだ。
【追記】最新の『2014年 桜開花予想』はこちら
スギやヒノキは、冬の寒さにも耐え得る針状の葉を緻密に茂らせる事で、
一年中光合成出来る常緑樹となり、春の訪れを待たずに開花する戦略を、
進化の過程で選んだ。
未だ寒さが厳しく、虫や鳥が活動していない時季ゆえに、
風媒花として、大量の花粉を飛散させねばならぬ所以である。
対して、落葉広葉樹の一群は、晩秋までに越冬可能な花芽を形成しておき、
少しずつ延びる日照を感知して、早春、真っ先に開花する戦略を採用した。
満作、臘梅、猫柳、辛夷、木蓮、連翹……
そして、梅、桃、桜に代表される、バラ科の花木。
数え上げればキリが無い、春の訪れを知らせてくれる可憐な花々。
霜を怖れて気温の上昇を待ち、葉を芽吹いて光合成する事よりも、
次世代へ遺伝情報を引き渡すための、“生殖”を最優先にする。
地に根を下ろして動けぬが為、命を張ったギリギリの、しかし
動ける物たちを巧みに魅了し誑かす、心憎いまでに、したたかな……
植物たちの美しい戦略を謳歌する春が、また、巡って来たようです。
0 件のコメント:
コメントを投稿