日本に住まう数多の人々の中で、この歴史的事実に対する“当事者意識”を、最も強烈に感じて居られるのは、今上天皇・継宮明仁陛下ではないか?と私は拝察している。その御覚悟のほどは、先年81歳の誕生日をお迎えになった折の、宮内記者会代表質問に対する、懇切丁寧なお答えからも如実に伺える。
【注:「陛下」とお呼びするのは、己を「臣民」と自認している次第ではない。天皇制についての見解は、あくまで中立。文化的には非常に貴い存在だが、政治的には矛盾と危殆を孕んだ制度との認識だ。尊称の所以は、孤高な身位に相応しいお働きを厳正に励行なさる、真摯誠実なお人柄への敬愛を礼法に則り表しているのみである】
まずは当該部分を、そのまま引用させて戴く。
先の戦争では300万を超す多くの人が亡くなりました。その人々の死を無にすることがないよう,常により良い日本をつくる努力を続けることが,残された私どもに課された義務であり,後に来る時代への責任であると思います。そして,これからの日本のつつがない発展を求めていくときに,日本が世界の中で安定した平和で健全な国として,近隣諸国はもとより,できるだけ多くの世界の国々と共に支え合って歩んでいけるよう,切に願っています。卑近な物言いで、誠に恐縮だが。
全面的に、激しく同意!
殊に『世界の中で安定した平和で健全な国』『近隣諸国はもとより、できるだけ多くの世界の国々と共に支え合って』と言及を重ねた語調は、なにやら現首相の不徳を、深く懸念しておられるようで。僭越ながら、お労しく感じてしまった。
3年前の2月、ご高齢を押して冠動脈バイパス手術をお受けになったのも、節目の年をご健勝の内に迎え、『残された私どもに課された義務』『後に来る時代への責任』を果たしたい、という切なる願いをお持ちだったからこそなのだろう。
新年に当たっての『ご感想』でも、以下のように述懐しておられる。
本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々,広島,長崎の原爆,東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に,満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています。敢えて『満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なこと』と、不徳の輩へ明晰な苦言を呈しておられる一文に、陛下のご心痛がヒシヒシと感じられ、ますますお労しさが募る。
歳を重ねる毎に戦後生まれの人口が増え、直接的な戦争体験の継承が困難になっていくのは、やむを得ぬ仕儀ではあるが。
より良き処を目指して努力する純粋な心根を持ち、未来を担って下さるお若い方達にこそ。数多の犠牲を強いた戦争が終結した後、残された者としての責務を果たすべく、強烈な“当事者意識”を以て努めていらした、陛下の年頭所感をこそ。
是非とも『終戦から70年という節目の年に』直接、宮内庁の公式ページで拝読の上、『戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えて』戴きたいと思う。
【追記:全くの偶然ですが、ジャーナリストの江川紹子氏も、同じテーマで記事を寄せてらっしゃいましたw リンク先も、併せてご参照戴けますと幸いです】
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