とは言え東京大学にも、短い間でしたが予算のごく一部を、お給金として頂戴していた恩義がございます。今年度から始まった『推薦入試』を、特設サイトが見づらい・大学当局主体の上から目線なぞと扱き下ろすのみでは、いささか忍びない経緯もあったり。
かつて研究を共にしていた御仁が、当時お世話になってた教授の最終講義を、丁寧にご連絡下さった折も折。憚りながら解題を試みれば、推薦入試特設サイトで、受験生への配慮にまで気配りが及ばなかった件は、恐らくその余裕が無いのだろうと拝察します。
“七帝大の長男”たる天下の東大に「余裕が無い」とは、我ながらずいぶん不遜な申し様ではございますが。『推薦入試トップページ』冒頭に提示されている文中二行目の一節に、語るに落ちた苦衷の本音が垣間見えている、と僭越ながら読解させて戴きました。
東京大学の『推薦入試トップページ』2016年2月25日現在のスクリーンショット |
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一昨年の12月、赤崎勇先生と天野浩先生が、ノーベル物理学賞の栄誉に輝いた折も折。
“七帝大の末っ子”たる名古屋大学が、東大・京大を上回り国内最多のノーベル賞受賞者を輩出している根源を、『どうして名古屋大学が?』と題した拙文で……
“七帝大の長男”すなわち東京大学のように、設立当初から現在に至る まで、国家予算から潤沢な資金を投じられるのが当然ではなかったそして
“七帝大の長男”との決定的な違いは、中高一貫私学からの志望者が少ないことにあるのでは?と、論考したことがありましたけれど。
国家予算から潤沢な資金を確約された、国内随一の最高学府を頼みに、全教科に於いて完成度が高い、しかし与えられた課題への正解を迅速に選ぶことのみに長けた、中高一貫私学の品行方正な受験生が、新入生の大多数を占めるに至ってしまった学部教育。
そこから、僅かな可能性にも挑み続けるぶっちゃけアホな情熱や、既存の概念を超越するぶっちゃけ突拍子も無い独創を生み出し得る、個性豊かな若人たちが育まれることは滅多に無い、という至極当たり前の経験則に、ようやくお気づきになったのかも知れません。
拙い論考をまるで裏付けるように、とまでは申しませんが。昨年度、7年ぶりで東京大学へもたらされたノーベル賞は、埼玉大学を卒業なさった梶田隆章先生への物理学賞。しかも13年前、小柴昌俊先生が受賞対象となったプロジェクトの、継続研究だったり。
ノーベル賞は、あくまでも一つの指標に過ぎません。けれど学部教育の現場で、教鞭を執っておられる教諭陣の実感をこそ、『総合的改革の一環として』反映させなければ、推薦入試の新規導入も功を奏すとは期待しかねるのが、元教員としての率直な存念。
仮に、東大の推薦入試特設サイトが、京大の『特色入試』案内サイトとして、公開されていたとすれば……その日のうちに学生・院生・職員・教官の如何を問わず、「見づらい・分かりにくい・当局の上から目線ウザい」のツッコミが入りまくったことでしょう。
『多様な学生構成の実現と学部教育の更なる活性化』が叶うためには、ボトムアップの現場優先主義をこそ尊ぶ『自由』を、鷹揚に承認しうる大学当局の「余裕」が必須!と不肖ながらお給金を頂戴していた恩義に代えて、誠心誠意、懸念申し上げております。
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