2017年5月14日日曜日

ママは いつでも 元気だよ

昨年10月下旬以来、またまた更新が滞っておりました間にも、
過去記事のご閲覧、誠にありがとうございました。

この度の休止中は、娘の就労支援を見据えた「予習」−−− サポート業界では「就労移行支援」という事業もあるそうですが −−− すなわち『問題解決のための情報収集力・対人コミュニケーション力・組織対応力』といったTransferable Skill=様々な業界や職種に転用可能なスキルを自得させるべく、所属学部やサークルなどの人脈を伝手に「苦手を避け社会と呼応する知恵の発露を促しておりました。

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と言っても娘から「ママは『お母さん』ジャナクテ『将軍』」と評された「変なお母さん」ですので、戦略戦術を策定する専門性能と前線兵站を統帥する対人性能を発揮したがるのみ。実務に充てるべき代行性能は、滅多に発揮しませんw つまり具体的にしていた「予習」とは、専らに娘が経験した「毎日」を傾聴しつつ、不備不足が散見される彼女のメタ認知を補完し、対人関係の機微を解題・蓄積すること。

サポート業界で言えば、カウンセリングが近いのかも知れませんが −−− 理学部出身で、大学・大学院・創薬ベンチャーという職歴のオカンは『問題解決のための情報収集力・対人コミュニケーション力・組織対応力』ならバッチ来〜い!な一方、大学の専門科目として臨床心理学や社会心理学を学んでいるのは、娘の方ですので −−− 双方の関係性カウンセラー/クライエントのそれとは全く異なっています。

コーチングメンタリングの方が、より近いかも?ですが、技術をきちんと学んだわけでもなく。理系女子の試行錯誤で叶えてきた「自家製療育」が期せずして、信州大学医学部附属病院・子どものこころ診療部の本田 秀夫 先生が提唱なさっている『新キャリア教育』 −−− あるいは単純に社会と呼応する知恵の一つである「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」の習慣 −−− へ結着できたのだと考えています。

そんなこんなで娘の懸案事項は、まず2回生の前半で一般教養の必修科目と国家資格取得の夏季集中講座を、まずまずの好成績で履修完了。かつ秋学期は順調にゼミ配属の段取りを消化し、第一志望の教授から次年度以降のご指導を戴ける運びとなりました。

ついでに選択科目2コマで、初めて単位を落とす「失敗体験」もやらかしましたが。在学中いつでも再履修で成績を上書きできるという、国立大学では考えも及ばなかった鷹揚な学風のおかげ様で、疎外感の生ずる隙も無く「成長体験」へ昇華叶いそうです。

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前置きが長くなってしまいました。つまり先日、娘へ家事の稽古を付けるため『起爆剤となる変事も勃発』と書いた件は、彼女の身に生じた懸案ではなく……

就労支援の「予習」が整ったところで、ようやく安堵の息をつき、5年前の高校受験を機に早期退職して以来ご無沙汰していた人間ドック健診を、3月初めに最寄りの病院で受けた際に、私が悪性腫瘍に罹患している旨が判明したのです。

健診で行われたスクリーニングの結果から精密検査のお勧めを郵送でお知らせ戴き、受けた初診の1週間後に癌診断のインフォームド・コンセント。

精査のデータを迅速に揃えて下さったタイミングで、その2週間後には、かつて勤務していた大学医学部の附属病院でセカンド・オピニオンを拝聴。

最初に受診した病院で提案された治療方針に従い施術して戴く旨を確定し、初診して下さった外来の医師から外科へ手術予約を申し送り願った上、更に2週間後は執刀主治医から改めて、より詳細な診断と治療方針のインフォームド・コンセント。

人間ドック健診から数えて2カ月と1週間目のゴールデンウィーク明けには、入院日程を見据えた周術期口腔機能管理のため歯科を受診できましたから、たいへん有り難いことに日本屈指と申し上げて良いほど最速かつ最善の医療を受けています。

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「健診で引っ掛かっちゃいましたけど、癌じゃなくてホッとしました〜」ではなく、紛うこと無き悪性腫瘍の診断。しかも今月下旬に手術を受け、その後は放射線治療へ移行する方針ですから、「普通」のお母様がたなら「気を揉む→心配が嵩じる→不安が募る→元気が無くなる」状況なのに、やっぱり私はいつもどおり元気

「こういうことになりましたので…」と心理カウンセリングをお奨め下さった外来の看護師長さんにも、がん医療連携手帳についてご説明下さった地域連携担当の看護師さんにも、せっかくいたわって戴いたのにアッサリお断りしちゃう「変な患者」で恐縮の極みですが。虚勢を張っているのではなく、ホントに元気なんです。

悪性腫瘍に罹患しながら元気でいられる理由は、自覚症状が全く無く適切な治療を施せば予後は良いと臨床研究で実証されている、初期段階で診断を受けられたことが第一。

そしてこれまでの履歴で積んできた知識と磨いてきた知能を以て、腫瘍が生じた理(ことわり)も治療方針の理も、心配や不安の生ずる隙無く解題・納得できていることが第二。

更に、自分自身と娘の「育ち」を通じて学ばせて戴いた、他者と関わり社会と呼応する知恵の一つとして、「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」の習慣が我が家の「文化」に根付いたことを第三に挙げるべきでしょう。

「保育園で指摘されちゃいましたけど、発達障碍じゃなくてホッとしました〜」ではなく、紛うこと無き自閉圏の特性を生来持ち合わせた娘が、人間ドックを受診した時から都度説明してきた精査の経過を傾聴しつつ、動揺せず平らかに、しかし臨場感を持って母が癌に罹った変事を受け容れている旨こそ、なにより尊い『励ます力』です。

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他者と関わり社会と呼応する知恵を終生自得できなかった義父と、親から顧みられなかった「平凡」を嫌厭する義姉の、隔絶の狭間で家族の「毎日」を支えるため神経を磨り減らしてきた義母は、折々の挨拶を寄越す唯一の孫娘へ宛て、彼女の母であり不肖の嫁である私の健康を、いつも過分なほど丁重に気遣ってくれます。

そんな祖母の問いへ『ママは いつでも 元気だよ』と応じるのが、娘の決まり文句。
この答えを彼女がこれからも返せるよう、「母の日」に快癒を誓いたいと思います。

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