そして、「普通」なら大人になるまでに自然と出来るようになることが、何歳になっても出来ないまま、殊に思春期以後の学校生活への不適応や、成人していても社会参加できない状況へ陥ってしまった。端的に言えば、それが「発達障害の二次障害」です。
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しかし二次障害以降の『親の学び』の現実は、そう簡単ではありません。
第一に「待てない」タイプの親御さんが、お子さんの抱えている発達の凸凹や「自分の『なにか』が自然には伸びない」という疎外感の自発を見過ごしたまま、古今東西の例に倣って「親の都合」を優先し拙速な指図を我が子に二次障害を生じてしまうまで続けて来られたのは、「こういう場合は、こうするもの」という「信念」をお持ちで、且つそれが万人に普遍の「正論」なのだという枠に嵌め込まれておられる証左だからです。
そんな固定観念が形成されたのは、親御さん自身が育つ過程で「自分は何も わかっていない」という焦燥に耐えつつ真摯に考え続け理解への道を切り拓くこと、すなわち「学ぶ」ための「我慢」を習い損ねてしまった結果と拝察しています。語弊を懼れず端的に言えば「待てない母」が習い性となさったのは多くの場合、無知の自覚に耐え真摯に考え理解を模索する「学び」ではなく単なる知識の集積に過ぎなかったのでしょう。
第二に、とりわけ高機能の自閉圏ですと「待てない」タイプの親御さんの視点からは、お子さんの「障害」と「人格」を別個の事象として捉えるのが難しいご様子。生来抱える中枢神経機能の凸凹を療育されなかったゆえの未熟や、疎外感が看過されたゆえの二次障害に因る認知の歪みといった「障害」を、お子さん本来の個性に基盤する「人格」と混同してしまう杜撰な感性は、辛辣な物言い誠に僭越ながら指摘せざるを得ません。
我が子に対する「幼稚な性格」あるいは「人格が歪んでいる」という誤った認識が親御さんの心底に潜んでいる限り、前述した固定観念に拠る「親は目上、子は目下」という価値観も相俟って、「待てない母」がお子さんへ向ける視線から「不憫な子だ」という哀れみや「厄介な子だ」という蔑みの色を拭い去ることは、決して出来ないでしょう。
以上の次第から「待てない」親御さんは残念ながら多くのケースで、我が子を二次障害へ陥らせた過去を後悔していたとしても、「子の都合=発達障害」に対し無知の自覚に耐え真摯に考え理解を模索する「親の学び」の実行が難しいのです。いくばくかの知識を集積できた途端「学んだ」つもりになり相変わらずお子さんの繊細な変化を「待てない」まま、「病院へ行って薬を貰って来なさい」「障害者手帳を取って支援を受けなさい」「障害者枠で雇って貰いなさい」と「上から目線」な指図に終始してしまいます。
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されど拙ブログの本旨は、「待てない」親御さん方を責めることではありません。拙宅の経緯を顧みても、私が保育園の先生方の指摘を拒み(実際、障碍の見立てを嫌いお子さんを転園させたお母様が当時おられました。)娘を二次障害へ陥らせてようやく、適切な導きが不足していた旨を悔悟している立場だったら「親の学び」の実行は極めて困難と想像するのです。
幸い私自身の育ちの過程では「好きなこと」へ邁進する機会を得、「自分は何も わかっていない」という無知の焦燥に耐えつつ真摯に考え続け理解への道を切り拓く「学び」を習い性とすることが叶いましたが、思春期を過ぎて身体ばかりは大人同然に育った我が子が眼前で認知の歪みを連発していたら到底、辟易を禁じ得なかったでしょう。
だからこそ「待てない」親御さん方には少なくとも、あなたの「上から目線」な指図が成人当事者であるお子さんの「人格」を貶めている旨に気づいて戴きたい。たとえ障害者雇用という情緒的庇護による当座の救済で、あなたが一旦は安堵の息をつけても、成人当事者であるお子さんのフリーハンドを尊重した彼ら自身による決断でなければ、再度「親の都合」で二次障害へ陥る危惧を我が子に負わせた旨、せめてご覚悟願いたい。
高機能発達障害の成人当事者を対象とした雇用制度の現状は、彼らを「受益者負担」という「正論」の枠に嵌め込み、本来は社会が担うべき合理的配慮に係る経費を当事者自身が生んだ成果から搾取しつつ、経済的にも人格的にも自立の見通しが立たぬ彼らの疎外感を看過した、「普通」を自認する「みんな」にだけ都合が良い情緒的庇護でしかありません。なればこそ決してあなたのお子さんの「ゴール」ではないという証左です。
発達障害の診断は、当事者が金輪際「伸びない」と断定する烙印ではありません。
彼らの成長を心から「待ち設ける」親御さんの支えがあれば、ゆっくりですが確実に
「伸び行く」お子さんですよ、と未来の選択を問うための informed consent なのです。
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【補記】「お母さん」と「子」連作として、不定期連載しております。
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>>第2回『「変な子」と「変なお母さん」』を読む
>>第3回『暴れる子 と『頑張るお母さん』』を読む
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