2019年2月27日水曜日

不安な母 と ひきこもる子

これまでヒロさん東大さんや、ドラゴンズさんが呈して下さった疑義へお応えし、「頑張るお母さん」や「優しいお母さん」や「肝っ玉母さん」では、どうしてお子さんがひきこもる顛末へと到ってしまったのか、私説ながら解題を試みて参りました。

当事者の皆さんが、ひきこもりへ到ってしまった旨に理由があるように、皆さんの親御さんが、ひきこもった我が子への対応を誤ってしまった旨にも理由があるのです。

***

2019-02-19
4年前に出会った50代男さん。まる

ほとんど寝たきりのような生活でしたので、足の筋力が衰えていて、歩くことさえ うまくできなくなっていました。  ですから、最初は家の周りを歩くことから始めました。   
しかも 近所の人の目が気になる とのことでしたから、車で自宅まで伺い、少し車を走らせた所にある公園でのリハビリ開始です。  最初は30分間、スタッフと一緒にゆっくり公園内を歩くことから始めます。   
3日後に高熱が出て1週間中止。   
再び開始。「こんなことしても、もう手遅れだ。」とブツブツと独り言を言います。   
正直 私は腹が立ちました。「だったら、やめたら!! 31年目の ひきこもりにチャレンジしたら どうですか?」  そんな汚い言葉が、一瞬 頭をよぎります。    
しかし、私もまた このサポートセンターで10年近く支援を受けて、社会に戻ることができた人間です。   当時のスタッフや青木に散々 悪態をついて、支援を中断させて困らせてきました。    
そんな私に対して、1度も怒ることもなく、徹底的に寄り添い続けてくれたスタッフたち。そのおかけで、今の幸せがあるのです。    
「謙虚に!! 仕えるものに ならないと。」と自分に言い聞かせました。支援している人を通して 私も成長していくのです。

***

2019-02-25
ひきこもった子どもと親との交流の方法 ドラゴンズ。

家のことを手伝いたくなかったのではありません。   
ひきこもった当初は、何もしていなくて、家で じーっとしていることを もうしわけなく思っていましたので、掃除をしたりとか、洗濯をしたりとかしよう としました。 
しかし、母親が「そんなことは やらんでええ。お前は仕事を探してこい。」と なんども強く私に言ったので、いつの間にか手伝うことをしなくなりました。  
 30年間、何も家の手伝いをして来ませんでした。何もです。    
それは とても悲しいことでした。ひきこもっているだけで、家のことを手伝えないのではないし、手伝いたいと思っていましたから、なおさら悲しかったです。   
ですから、今の私は 何もできない人間になってしまったのです。 
Joeさんや東大さんが、「子どもたちに経験をさせてください。」と書いていました。   
僕は本当に そうだと思います。母親が全てやってしまうと、子どもは、いい年の大人になっても 何もできない人間になってしまいます。   
私が その証明です。

***

先週「まるさん」が書いて下さった記事を読んで、多くの読者の皆さんは「足の筋力が衰えていて、歩くことさえ うまくできなくなってしまうほどの状況へ、息子を追い詰めるなんて。どういうひどい親なんだ!」と、憤りをお感じになったかも知れません。

けれど私は、ドラゴンズさんのお母様は本来、何事もてきぱきこなして頼りになる「肝っ玉母さん」なのではないかと想像しておりました。案の定、ドラゴンズさんが30年に及ぶひきこもりで『ほとんど寝たきりのような生活』へ陥ってしまった理由は、あらゆる家事を『母親が全てやってしまう』むしろ「良いお母さん」だったからなのですね。

頑張るお母さん」も「優しいお母さん」も「肝っ玉母さん」も、皆さん揃って本来は「良いお母さん」なのです。

ただ「みんなと同じ」枠から外れぬ旨こそ正しいと信じて大人になった「良いお母さん」にとっては、障害と名指しされるほど大きな凸凹を我が子が生まれながらに抱えている事実だけで、『わかるからよくて、わからないからダメ』という自己否定に囚われ、不信感・被害感を我慢できず怒りでしか反応できない「カサンドラ」状態へ陥っても致し方ないほど、過大な難儀なのです。

ドラゴンズさんのお母様が「そんなことは やらんでええ。お前は仕事を探してこい」と、何度も強く息子さんへ言ってしまった旨にも理由があります。きっと何事もてきぱきこなしてしまう「肝っ玉母さん」からすれば、「みんな」よりゆっくり丁寧に時間をかけないと「みんなと同じ」ことを完遂できない、ドラゴンズさんの様子を目になさるだけでも不安で仕方なかったのでしょう。

当事者の皆さんが、大きくて深い不安ゆえにひきこもりへ到ってしまったように、皆さんの親御さんも、我が子に対する大きくて深い不安ゆえに対応を誤ってしまったのだと、私は考えています。

【補記】
「お母さん」と「子」シリーズとして、不定期連載して参りました。併せて前作にも、お目通し戴けますと幸甚です。

>>第1回『「良いお母さん」と「悪い子」』を読む
>>第2回『「変な子」と「変なお母さん」』を読む
>>第3回『暴れる子 と『頑張るお母さん』』を読む

0 件のコメント:

コメントを投稿